銀河のリズム、地上の鼓動―魂職に出会うまで―ひびきの輪の後で⑤見えていなかった波

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銀河のリズム、地上の鼓動―魂職に出会うまで ―ひびきの輪の後で②触れてほしくなかった場所

「本気で生きる覚悟がないんだよ」

アイの一言が、ミカの胸に刺さっていた。
受け流したはずなのに、頭の中では何度もその言葉がリピートされる。
(本気って……私は、ちゃんとやってるつもりだったのに)

それから、なんとなくタイミングがズレはじめた。

仕事中、電話先で声がかすれたり、スクリプトを読み間違えたり。
乗ろうとした電車に目の前でドアが閉まったり、帰宅すると洗濯機の排水が止まっていて床がびしょ濡れだったり。

「なんでこんなことばっかり……」

疲れてベッドにうずくまりながら、ミカはふと、ひびきの輪でユウが話していた言葉を思い出す。

「現実は自分の内側の波動の投影。だから、“感じてること”が、そのまま現れるんだよ」

(私、今どんな波動を出してる?)

静かに胸に手を当ててみる。
そこには、「本気じゃないって思われたくない」という不安、そして「わかってもらえない」という寂しさが渦を巻いていた。

(私、”本当は本気じゃない”って、自分でも思ってたのかも)

気づきたくなかった感情に触れた瞬間、涙がぽろりとこぼれた。
誰かの言葉に反応していたのではなく、それは自分の内側の”信じていたこと”が、外に映っただけだったのかもしれない。

けれど、そう気づいたからといって、すぐに現実が変わるわけではなかった。
仕事もギクシャクしたまま。心のもやは晴れず、どこか不安定な日々。

(波動とか、宇宙の法則って……結局“本当に信じてること”が出るんだとしたら、私、何を信じてるんだろう)

その問いの答えはまだ見えないまま、ミカは週末のリトリートの準備を始めた。

************

リュックの中身を整えながらも、ミカの手は止まっていた。
窓の外では、月がやさしく照らしている。
何かを残したいような、手放したいような気持ちが胸にあふれてきて、ミカは一枚の便箋を取り出し、ペンを手に取った。

思い浮かぶのは、あの日のアイの言葉だった。
その言葉の奥にあった真意を、自分なりに受け止めて、どうしても伝えておきたくなった。

ミカは、そっと書き始めた。

アイへ

この手紙は読んでもらえるかわからないけど、どうしても書きたくなって書いています。

あの日、アイが言った「本気で生きる覚悟」って言葉、正直言うとすごく痛かった。
そして、時間がたってもその言葉がずっと心に残ってる――
わたし、考えたんだ。「なんでそんなに刺さったんだろう?」って。

そしたら気づいたの。
たしかに私、「楽しいこと」を追いかけてた。
でもそれって、“楽しいふり”だったのかもしれない。

心地よさとか、ハッピーな波動とか言いながら、どこかで“嫌なことを避けるため”に選んでただけだった
それって、本当の楽しさじゃなかったのかもって。

アイが「本気で生きる覚悟」って言ったとき、ハッとしたんだ。
わたし、本気で向き合いたいものが、あるのかな?って。

アイには農業があるよね。
大地と向き合ってきた時間が、ちゃんと根っこになってる。
ユウには星読みっていう、自分の感覚を信じてきた道がある。

でも、わたしには……まだ、それが見つかってない。

ただ「楽しそうだから」って始めてみても、どこかフワッとしてて、形にならない。
ふたりみたいに、“これだ”って言える何かが、わたしにはなくて。
だから本当は焦ってた。

だけど――
今回のリトリートでは、「自分の中にある何か」を、ちゃんと感じてみたい。

アイの言葉で、気づかされたよ。
ありがとう。痛かったけど、本当のわたしと向き合うチャンスだよね。

明日、会えるのを楽しみにしてる。

ミカより

そして、ユウの顔が浮かび星読みの波動設計セッションが思い出される。
あのときのユウの言葉が、ずっと心の奥で響いていた。

銀河のリズム、地上の鼓動 ―魂職に出会うまで⑤波動設計士ユウのはじまり 

ペンがまた、すうっと動き出した。

ユウへ

この手紙、今どうしても書きたくなって……ちょっとだけ、わたしの気持ち、聞いてもらえるかな。

前にユウに言ってもらった言葉――

「中心に、とても澄んだ“喜び”の音がある」
「ミカには、声の響きや言葉で人の内側を震わせる力がある」って。
あのときは嬉しかったけど、正直、よくわからなかったんだ。

でも、最近になってようやく、人の内側を震わせる力ってこれかな?思う瞬間があったの。

会社でわたしがハッピーに過ごしてたら、逆にまわりから嫌味を言われて、空気がすごく重くなったの。そのとき、もしかして、わたしの波動が場を揺らしてる?って思ったんだ。
ソラの流れに知らず知らず乗っていて、自分の“響き”で周囲に影響を与えてる……?
それって、良くも悪くも“響いてる”ってことなんだよね。

この間の農場での出来事も同じ。私の響きが調和じゃなくて、不協和音を生み出してしまったんだよね。わたしは自分の音をどう扱っていいかわからなくて、戸惑っています。

ユウが言ってくれた「自分が楽しい」が一番大事――
あの言葉は大好きで、わたしの大切なお守りのように感じているのだけど

でもね、じゃあ「わたしにとっての本当の“楽しい”って、なんだろう?」ってなると、まだ、わかっていないんだよね。わたしには何もないって思っちゃうんだ。

私も早く自分の中心にある、本物の楽しいを知りたい。魂職を見つけたい。

星や音や言葉――
ユウが教えてくれた世界の中で、もっと自分を知っていきたい。
そして、わたしの響きを、本気で響かせられるようになりたい。

リトリートでは、それを見つけるヒントがある気がするんだ。

また明日、会おうね。

ミカより

ミカは、二人に宛てた手紙を一気に書き上げた。

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