皇の時代にわたしを生きる実験 (第4話)自然さん、他多さん、冊奴さん

共鳴小説
スポンサーリンク

朝、目が覚めた。
まだ意識がぼんやりしていて、夢と現実の境目が曖昧な時間。
ミカは布団の中で静かにつぶやいた。

「自然さん、他多さん、冊奴さん、今日もよろしくお願いします」
これは最近の習慣だ。

自然さんは、宇宙や自然そのもの。
そして他多さん、冊奴さんは、一人ひとりについている目に見えない自分だけの、自立を助ける協力者だという。
皇の時代の生き方を学ぶようになってから知った存在だった。

最初は半信半疑で、信じるというより、実験だった。

他多さんや冊奴さんが何なのかは正直よくわからない。
ただ、毎朝挨拶すると気分がいいので続けている。

効果があるのかと聞かれたら、よくわからない。
ただ、不思議と心強くなって安心感に包まれるのだ。

だから今日も挨拶する。

起き上がると、まずキッチンへ向かう。
朝、起床後三十分以内に何か固形物を食べ始める。
これも最近続けている習慣の一つだ。

朝食を抜くと、事故に巻き込まれやすくなるのだという。
量は腹半分。満腹にしてしまうとセンサーが働かなくなるらしい。

冷蔵庫からいちごを取り出し一口食べる。
甘みが口の中に広がる。
すると、ぼんやりしていた頭が少しずつ目を覚まし始めた。
人間も動物なのだから、まずは身体を整える。
難しい理論より先に、そういう基本の方が大事なのかもしれない。

朝食を終えたミカは窓を開けた。
風が静かに部屋へ流れ込んでくる。

仕事を辞めてから数か月が経った。
周りの人たちは心配してくれる。
ありがたいことだと思う。

「次はどうするの?」
「仕事は見つかった?」
「焦らなくていいとは言うけどね……」
そんな言葉を何度も受け取った。

けれど不思議なことに、本人はそれほど焦っていなかった。
むしろ周りの方が焦っている。
それが少し面白かった。

今の自分には、まだ休む時間が必要な気がしている。
長い間抱えてきた思い込み。
不安。
罪悪感。
こうしなければならないという考え。

そういうものを少しずつ浄化・消化している最中なのだ。

新しいことを始める前に、まずは祖のゴミ出しをする。
家の片付けと同じだ。
不要なものがいっぱいの部屋に、新しい家具は置けない。

だから今はのんびりしている。
とはいえ、何もしていないわけではない。

以前の職場の同僚から、ときどき連絡が来る。
「ちょっと手伝ってもらえませんか?」
そんな声がかかれば、できる範囲で引き受ける。
在宅での仕事だ。

贅沢はできないけれど、暮らしには困っていない。
必要なものは、なぜかちゃんと回ってくる。
それもまた最近の発見だった。
頑張って取りに行かなくても、流れの中からやって来るものがある。

ミカはお湯を沸かした。
お気に入りのカップを棚から取り出す。
茶葉の香りが広がる。
湯気がゆっくり立ち上る。

その様子を眺めながら、ふとテーブルの上の封筒に目を向けた。
昨日届いた手紙だ。
差出人は、ひびきの輪で出会った中学生の女の子だった。

まっすぐな文字で書かれた名前を見るだけで、少し頬が緩む。
そうだ。
今日は返事を書こう。

ミカはカップを両手で包みながら、窓の外を見た。
空は青く、雲はゆっくり流れている。

人生も案外こんなものなのかもしれない。
流れを無理に動かそうとしなくても、
必要な出会いがやって来て、
必要な仕事がやって来て、
必要な手紙が届く。
だから今は信頼してみようと思う。
すでに始まっている流れを。

ミカは一口お茶を飲んだ。
そして便箋を取り出した。

さて。
どんな返事を書こうかな。

関連記事

銀河のリズム、地上の鼓動-わたしたちは響き合うために出会った-をキャッチしてくださったあなたへ

X:ピース・ウーマン(@aIRJW4zvMaRGE4N私達はこの地球に住むみんなが 調和して、自分達が思う幸せであることを望んでいます。 それには地球という体験の場所を大切にする。 そして、そのためにこれから先もどんな事をしていけば良いのか知ること、そしてそれを伝えて行きます。

タイトルとURLをコピーしました