風の章 ―見えない音に導かれて―
共鳴小説『三つの種、響きのはじまり ― 銀河のリズムの前奏曲 ―』風の章 ―見えない音に導かれて―①
第二章 声にして、届かないもの
「あなたのその感覚は、“ギフト”かもしれません」
その言葉が頭から離れなかった。
スペースで話していた女性の声は、やわらかく、どこか“音なき音”のようにユウの心に染み込んでいた。
わずらわしいと思っていたこの感覚を活かすこともできるのかもしれない。それは初めて、自分の“繊細さ”に希望を見出した瞬間だった。
数日後、その女性のSNSの投稿をさかのぼってみているうちに、
“直感占星術”という講座にたどり着いた。
「自分の感覚を“ツール”と結びつけて、人の力になる」
そう書かれていた。
(私にも、できるかもしれない)
(占い師なら、あの音なき音を活かせるかもしれない)
受講を決意するまで、あまり時間はかからなかった。
講座では、星の配置が人の性質やタイミングを映し出すこと、
ホロスコープの読み解き方、カードの使い方、相談者との対話のポイントなどが教えられた。
けれど、ユウにとって本当に学びだったのは、
**「感覚は信じていい」**という確信を得たことだった。
講座中、星の配置を読むとき、自分の中にふっと浮かぶ“感覚”――
それが解説と一致していることが、何度もあった。
“音なき音”は、もしかしたら宇宙からのメッセージだったのかもしれない。
初めてのモニター鑑定。
手のひらに汗をにじませながら、画面越しの相手の話を聞いた。
「最近、自分に自信がなくて…このまま進んでいいのかわからないんです」
星の配置を読みながら、ふと胸の奥に小さなざわめきが走る。
何かが、言葉にならないかたちで届いてくる。
「…たしかに不安定な時期にいらっしゃいます。でも、“過去の自分”とちゃんと向き合っているように見えます。怖さの裏には、ずっと抑えてきた情熱があるのではないでしょうか」
画面の向こうの女性の目が潤む。
「…なんで、そんなことまでわかるんですか?」
ユウはにっこり微笑んだ。
(わたしにも、伝わるものがあるんだ)
けれど、それは一方で葛藤の始まりでもあった。
「わかりました、でも…当たっていないと思いました」
ある相談者の言葉が、ユウの胸に残った。
確かに、伝えたいことは伝えた。けれど――
(“響いてない”…?)
ユウは気づいた。
いくら正確に感じ取っても、伝える力がなければ、届かないのだと。
言葉の選び方、タイミング、伝え方。
それらが少しずれるだけで、せっかく感じ取った真実も「ただの言葉」になってしまう。
(この感覚を、本当に活かすにはどうしたらいいんだろう)
星の配置を読むことも、カードを引くこともできる。
けれど、本当に届けたいのは「わかってもらえる」安心感だった。
(人と関わるって、怖い)
(でも…もう、逃げたくない)
そう思えたのは、自分の“音”を受け取ってくれる誰かと出会えるからだった。
まだ名前も知らないその誰かに向かって、風がまた動き出していた。
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