今、響いてくれたあなたへ。
共鳴小説は、ミカ、アイ、ユウという三人の女性を通して、わたしたちが“これからの時代”をどう生きていくかを見つめ直すストーリーです。
風の章は、自分の響きを閉ざして生きてきたユウの物語
風の章 ―見えない音に導かれて―
第一章 感じすぎる世界
風が吹くと、音が鳴る。
だけど、ユウには風が「吹く前の音」が聞こえていた。
それは耳で聞くものではなく、肌の内側がふるえるような感覚だった。
木の葉が揺れるより前に、空気が変わる。
そのとき、胸の奥がすっと引かれるような静かなざわめきが生まれる。
「…また、変なこと言ってる」
小学生の頃、そう言われて笑われた記憶がある。
それから、ユウは自分の“感じ方”を人に話さないようになった。
母はいつも忙しく、優しいけれど、現実的な人だった。
「しっかりしていれば大丈夫」「気にしすぎないの」
母のその言葉の奥に、心配と苛立ちが入り混じっていた。
(どうして、みんな普通に生きていけるんだろう)
朝のホームルーム、昼休みの教室、家族との食卓。
誰もが笑顔で話しているのに、ユウにはその“奥”にあるものが透けて見えた。
声と、想いが違う。
「大丈夫だよ」
そう言う声の裏には「無理してる」があって、
「ありがとう」の笑顔の裏には「どうせ分かってない」があった。
そういう“音なき音”が、常に心の奥をくすぐった。
何が本当で、何が嘘なのか。
自分の感覚が間違っているのか、それとも世界がおかしいのか。
思春期になる頃には、ユウはもう“感じないふり”が上手になっていた。
誰よりも人の空気を読み、気を使い、合わせる。
その結果、「優しくて、気が利く子」になった。
だけど、夜になると心がぐったりと疲れていた。
誰のために生きているのか、わからなくなるくらいに。
社会人になってからも、それは変わらなかった。
派遣社員としていくつかの会社を転々としながら、
仕事を覚えることも、気を遣うことも得意だったけど――
職場の“空気”が、しんどかった。
会議での発言と、本音のLINEグループの温度差。
上司の「いいね」に隠された苛立ち。
同僚の笑顔の下にある「私ばっかり」という小さな叫び。
そういう“音”が、無意識にユウの内側を傷つけていた。
(なんで、こんなに苦しいんだろう)
(どうしてわたしは、普通を生きられないんだろう)
ある夜、ふとSNSを開くと「音を感じる人たちの集い」というスペースが開かれていた。
その中で語られていた言葉――
「あなたのその感覚は、“ギフト”かもしれません」
「音なき音は、“波動”とつながるセンサーです」
“ギフト”という言葉に“わたしの中にある何か”が、ようやく誰かに肯定された気がした。
静かに風が吹き始めた――
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X:ピース・ウーマン(@aIRJW4zvMaRGE4N)私達はこの地球に住むみんなが 調和して、自分達が思う幸せであることを望んでいます。 それには地球という体験の場所を大切にする。 そして、そのためにこれから先もどんな事をしていけば良いのか知ること、そしてそれを伝えて行きます。