共鳴小説『三つの種、響きのはじまり ― 銀河のリズムの前奏曲 ―』風の章 ―見えない音に導かれて―①
共鳴小説『三つの種、響きのはじまり ― 銀河のリズムの前奏曲 ―』風の章 ―見えない音に導かれて―②
風の章 ―見えない音に導かれて―
第三章 風が重なり、音になる
星の配置を見ていた。
ユウの部屋に差し込む夕陽が、ホロスコープの輪郭を金色に染める。
「2025年は・・・時代を動かす天体が、大きく動くんだ」
星たちは、いつも先に教えてくれる。
社会の流れ、人々の意識、見えない風向きの変化を。
(今は、“境界が溶ける”とき)
(たくさんの人の心が、揺れている)
その予感は、SNSの相談メッセージや、街中の会話の端々にまでにじみ出ていた。
「なんか、先が見えない」「本当にこれでいいのかな」「自分のやりたいことがわからない」
(きっと、この転換期は飛び立つチャンスなんだ。
でも、不安のままでは動けない人も多い)
だからこそユウは思った。
「大丈夫だよ」って伝えたい。
星が語ることも、自分の感覚が教えてくれることも、
“ちゃんと未来は開いていく”ってことを、伝えたい。
でも、伝えれば伝えるほど――壁にぶつかった。
「それ、ちょっとスピリチュアルすぎて…」
「なんか信じたいけど、よくわかんない」
「へぇ〜、不思議だね」で終わる人も多い。
ユウは、だんだん声を出すのが怖くなっていった。
(また、「わかってもらえない」が怖くなる)
(わたしだけが、こんな風に感じてるのかな)
誰かに伝えたいのに、伝えられない。
感覚はあるのに、言葉にならない。
そのとき、偶然目に入った小さな投稿――
「地球と対話する時間。地球の鼓動に、耳を澄ませてみませんか?」
書いたのは、アイという女性だった。
(地球と…対話?)
気になってその投稿を読んだユウは、胸の奥にふっと風が吹いたような感覚を覚えた。
それは、誰かの言葉を通して“音なき音”が響いたような感覚だった。
アイの農場は、駅から少し離れた静かな丘の上にあった。
ユウはそこで行われる2泊3日の農業体験に参加した。
「はじめまして、ようこそ」
そう言って出迎えてくれたアイは、思ったよりもずっと素朴で、
でも言葉のひとつひとつに、大地に根ざした“確かさ”があった。
その場にはもう一人、ミカという女性もいて、
彼女はまるで風のように軽やかで、無邪気な笑顔で話しかけてきた。
「ユウさん、占い師をされてるんですね、ステキなお仕事!」
そう言われたとき、ユウはくすぐったくて、でもなぜか涙がこぼれそうになった。
アイの話を聞くうちに、ユウは驚いた。
自分がこれまで感じていた星の流れ、
人々の不安や希望、時代の転換点――
それらがすべて、“理論”というかたちで整理されていることに。
「これ…まさに、私が感じてたこと」
宇宙のサイクル、大地の波動、目に見えない流れの転換。
それはユウがずっと“音なき音”として感じていたものと、ぴたりと重なった。
「ずっと、一人でがんばってきたんだね」
そう言ってくれたのはアイだった。
その言葉に、ユウの中の何かがほどけていった。
(わたし、ひとりじゃなかった)
誰にも理解されなかった感覚。
伝えたくて伝えられなかった想い。
それらが、ここでは「分かるよ」と言ってもらえる。
ユウの中で、はじめて“安心”が根を下ろした瞬間だった。
(そうか。伝わるって、“わたしが安心してること”なんだ)
誰かに伝える前に、まず自分自身が「大丈夫」になっていること。
焦りや恐れからではなく、静かであたたかな場所から声を出すこと。
それが、本当の「伝える力」になるんだ。
風が止むと、音が生まれる。
ユウの中の風も、今ようやく音になり始めていた。
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銀河のリズム、地上の鼓動-わたしたちは響き合うために出会った-をキャッチしてくださったあなたへ
X:ピース・ウーマン(@aIRJW4zvMaRGE4N)私達はこの地球に住むみんなが 調和して、自分達が思う幸せであることを望んでいます。 それには地球という体験の場所を大切にする。 そして、そのためにこれから先もどんな事をしていけば良いのか知ること、そしてそれを伝えて行きます。