銀河のリズム、地上の鼓動ー不登校と自立共育③皇の時代は他人の領域に入り込まない
夕食の支度をしながら、尚子はママ友たちとの会話を思い出していた。
「ひびきの輪って何?聞いたことないけど」
「変な宗教じゃないでしょうね?」
「つむぎちゃん、変な影響受けてない?子どもって純粋だから心配よね」
善意からの言葉だとは分かっていても、心に引っかかっていた。つむぎがあんなに生き生きとした表情を見せてくれたのに、それを理解してもらえない悲しさ。自分の判断は間違っていたのだろうか。
皇の時代は始まっている
夕食後、いつもならわざわざ言わないところを、ふと健一に本音がこぼれた。
「みんな、理解してくれなくて…」
声が震えた。健一は手を止めて、尚子の方を向く。
「私、間違ってるのかな。つむぎを変なところに連れて行って…」
健一は静かに尚子の話を聞いていた。そして、しばらく考えてから口を開いた。
「つむぎの絵を見たら分かるよ。あんなに生き生きとした表情、久しぶりに見たもん。尚子が間違ってるわけないじゃないか。つむぎのためを思って、いろいろ調べて参加したんだろう?俺には思いつかないことだよ」
尚子の目に涙がにじんだ。夫がこんなふうに自分を理解してくれるなんて思ってもみなかった。
「最近のつむぎ、なんだか違うと思ってたんだ。前よりも…自由になったっていうか」健一は続けた。
「俺、ずっと何もできなくて申し訳なく思ってた。尚子が一人で頑張ってるのに、口出しする資格もないような気がして」
「そんなこと…」
「でも、つむぎがあんなに変わったなら、そこは良い場所なんだと思う。尚子の判断は正しかったよ」
その夜、つむぎを寝かしつけた後、尚子は改めてつむぎの絵を見つめていた。健一の理解を得たことで、「私一人で頑張らなくてもいい」という気持ちも静かに芽生えていた。
絵に描かれた人物は、とても自由で安らかな表情をしている。つむぎも、私も、あの場所で何かが変わったのだ。
自分が変われば周りも変わる
翌朝、朝食の準備をしていると、健一が口を開いた。
「今度のひびきの輪、俺も一緒に行ってみてもいいか?」
尚子は驚いて振り返った。
「え?」
「つむぎがあんなに変わったなら、俺も見てみたい。それに…」
健一は少し照れながら続けた。
「家族で一緒に何かするのも、久しぶりだな」
「パパも一緒に来るの?」
朝食を食べていたつむぎの目が輝いた。
「ひびきの輪では、みんなそのままでいいんだよ」
つむぎが健一に説明する姿を見て、尚子は娘の成長と家族の新しい可能性を感じた。
いつの間にか、つむぎが一番大切なことを理解していたのかもしれない。
「じゃあ、今度は家族3人で行ってみよう」
尚子の提案に、健一もつむぎも笑顔で頷いた。
「パパも、そのままのパパでいいからね」
つむぎの言葉に、健一は「ありがとう、つむぎ」と優しく答えた。
尚子は思った。「ちゃんとしなきゃ」「私がしっかりしなきゃ」と自分を縛っていた声が、少しずつ小さくなっていく。代わりに聞こえてくるのは、家族それぞれの自然な笑い声だった。
皇の時代は、もしかしたらこんなふうに、静かに小さく始まっていくのかもしれない。
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