銀河のリズム、地上の鼓動 ―魂職に出会うまで ―①ひびきの輪をもう一度
銀河のリズム、地上の鼓動 ―魂職に出会うまで ―②響環ZINE vol.3の制作風景
見失った声 〜梨乃〜
午前8時。オフィス街をヒールの音がリズムよく響く。
梨乃は左手にスマホ、右手にはスタバのトールサイズを持ち、眉間にしわを寄せたまま電話をしていた。
「だからそれ、クライアントの意向に合ってないって昨日も言ったよね?わかってる?ごめん、ちょっと語気強くなった」
エレベーターに乗り込み、鏡に映った自分の顔を見る。
きちんとセットされた髪、淡い口紅、クマを隠したコンシーラー。完璧な「仕事顔」。
だけど、心の中はずっとくたびれていた。
広告代理店に入って13年目。
梨乃は企画部のチームリーダーとして、数々のプロジェクトを回してきた。
プレゼンも得意、調整力もある、後輩指導にも慣れている。
「なのに、どうしてこんなに、つらいの?」
そう思うのは、毎朝ベッドから体を引きはがすように起きる瞬間。何かが「違う」とわかっていながら、その“違和感”に名前をつけられない日々。
数年前までは、目標があった。
「女性でも、企画責任者として大きな仕事をまわせることを証明したい」
「クライアントに“あなたじゃなきゃ”って言ってもらいたい」
そう思って頑張った。
でも、いざそうなった今、達成感よりも空虚さが強かった。
「わたし、本当は何がしたいんだろう」
そんなこと、考えてはいけないと思っていた。
“やりがい”なんて、贅沢だ。
“仕事は我慢料”だと、誰かが言っていた。
でも、心は正直だった。
最近、何もしてないと不安でイライラする。
未来のことを考えると怖くなるから。
「このまま、60歳まで、同じような毎日を繰り返すのかな…」
そう思ったある晩、SNSで見かけた“占い師ユウ”の投稿が目に留まった。
「魂の声、聞こえてますか?今、目の前の仕事がつらいのは、
魂が“ほんとうの役割”を思い出そうとしてるサインかもしれません」
“ほんとうの役割”その一文が心の深いところに、柔らかくしみこんでくるようだった。
思わず、個別セッションの申し込みボタンを押していた。
************************************
ユウは小さなカフェの窓際で、一人の女性と向き合っていた。
女性の名前は「梨乃(りの)」。30代後半、広告代理店で働くキャリアウーマン。どこか張りつめた表情と、時おり漏れるため息。
「好きなことを仕事に、なんて理想論でしょ?」
梨乃は、カップに視線を落としながら言った。
「お給料は我慢料。確かにそのとおりって思ってる。だけど…もう、私ばっかり我慢の限界…この間だって私の企画だったのに…」
ユウはただ、うなずく。
「梨乃さんの魂が、静かにサインを送ってるんだと思います。“もう違う道に行こう”って」
梨乃がふと顔を上げ、ユウの目を見た。
「正直、よくわからない。“魂の声”なんて、感じたことないし」
梨乃とのセッションは、これで4回目だった。
毎回、最初の30分は仕事の愚痴だった。
「上司が変わらなくて…」「クライアントに無茶ぶりされて…」
そして最後に、ぽつんと、「でも、私のほんとうの役割をしたい」と。
ユウは、彼女の星の配置や現在の流れを丁寧に読み取り、
今は内省と癒しの時期だと伝えた。
行動のヒントも、意識の向け方も、言葉を選んで届けた。
梨乃はいつも、「わかった」と言った。けれど、それだけだった。
次に会うと、また同じ愚痴を繰り返していた。
”梨乃さん、原因の自分を見つめるのが怖いんだろうな” ユウはわかっていた。
でも、それでもふと、疲れがにじむ日もある。
自分のタイミングで、自分の意志で変わろうとしない限り、どれだけ助言しても変化は起きない。
思考や感情の外側にある、深い部分。体の奥に染み込んでしまった“重さ”や“観念”を、言葉で揺らすだけでなく、もっと深いレベルで整えていく必要がある。
「梨乃さんは“魂の声”を聞けていますよ。今こうして、“わからない”って言いながらも、ここに来たことそのものが、魂のサインなんです」
そのことばに、梨乃は少し首をかしげた。
「今度、ひびきの輪っていう小さな集まりを開催するんです。“魂職”っていうテーマで話しをすのるで、梨乃さん、来てみませんか?」
ユウは新しくできたばかりの響環ZINEを差し出した。
ZINEを開きながら、梨乃はうなずいた。
すぐに変われる気はしない。
でも、もう少しだけ、自分の魂の声に耳を澄ませてみたくなっていた。
梨乃の中で、言葉ではない「響き」が立ち上がってくる。
「そうね、この日なら参加できそう」
ユウはゆっくり息を吸い込んだ。
響環ZINE Vol.3 〜魂職への扉がひらくとき〜
響環ZINE Vol.3 〜魂職への扉がひらくとき〜①魂職(コンショク)って何?
響環ZINEバックナンバー
響環ZINE vol.1「共鳴のはじまり」①銀河のリズムと、わたしたちの時代 [共鳴小説]
響環ZINE vol.1「共鳴のはじまり」②2025年、星が動く― 銀河と地上の転換期 ― [共鳴小説]
響環ZINE vol.1「共鳴の始まり」③ようこそ、響環ZINE vol.1へ [共鳴小説]
響環ZINE vol.2「祖の時代から皇の時代へ」 ①2500年の夜を越えて[共鳴小説]