共鳴小説【皇の時代】魂の旋律が、言葉を超えて触れ合うとき⑧はじまりの決意と、見守る愛

共鳴小説
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湖畔のペンションから戻った翌朝。
農場の空は、夏の光をいっぱいに受けて澄み渡っていた。

アイは、朝露に濡れた草を踏みながら、母が畑で雑草を抜いている姿に近づいた。

「……お母さん、ちょっと話していい?」

母は手を止めて振り向き、うなずいた。

「うん、もちろん」

アイは立ったまま、少しの沈黙のあと、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「わたし…この農場を引き継ごうと思ってやってきたけど…本当は、農業そのものがやりたかったわけじゃなかったんだと思う」

母は、目を細めて優しく頷いた。

「……気づいたのね」

「うん。本当にわたしがやりたいのは、農を通して理論や時代の転換を深めること。それを実際の生き方に落とし込みたいし、知識を得るほどに自然の美しさに感動するの。その感動を誰かと分かち合っていきたい。農業はあくまで、それを支えるための手段だったんだって気づいたの」

すると、奥から父がやってきて、静かに会話に加わった。

「それを、自分の口で言えたのが、すごいことだと思うぞ」

アイは驚いたように父を見る。

「……怒らないの?」

父はふっと笑った。

「最初から、アイが農業を本当にやりたいわけじゃないことは、うすうす感じてた。
でも、自分で気づくまでは、俺たちからは何も言わなかった。おせっかいじゃない、見守る愛ってやつだな」

母も優しく微笑んだ。

「親ってね、自分の考えを押しつけたくなっちゃう時がある。でも、皇の時代にはそれはもう古いやり方。
信じて待つ。それが本当に、子どもを尊重するってことだと思ってるの」

アイの目に、静かに涙が浮かぶ。

「ありがとう…ちゃんと見てくれてたんだね。わたし、自立するってこういうことなんだって、今ようやくわかった気がする」

しばらく沈黙が流れたあと、父がふと口を開いた。

「……実は俺もな、本当はずっと理論の研究がやりたかった」

「え?」

「この土地で農業を始めたのも、自然の循環の中に何か大きな法則がある気がしてな。
それを見つけたくて、手を動かしてきた。でも、生活に追われてるうちに、研究する時間も気力もどんどん遠のいてしまって…」

アイは、父の言葉に息を呑む。

「じゃあ、お父さんも…?」

「うん。ほんとは、農場を研究所みたいにしたいんだ。
土の波動や季節のバランス、意図の持ち方と作物の育ち方の相関……。でも、正直まだまだ先の話だ。金も時間も、全然足りない」

「……それでも、夢なんだね?」

「ああ。一番やりたいことだからな」

アイの胸に、あたたかな火が灯るのを感じた。
「研究はわたしもやりたい。じゃあ、今すぐできることから始めようよ」

「たとえば?」

「理論や実験、気づきをまとめたホームページを作るの。まずはわたしたち親子が、この農場で何を見て、何を考えているのかを、記録にして発信していこう」

父は少し驚いたように目を丸くし、そしてうれしそうに笑った。

「……いいな。それはすぐにでも始められる」

「私、トップページの文章、書くよ。
この農場は、地球と人が響き合う“ラボ”であり、日々の営みの中に宇宙の法則を見つけていく場所ですって」

母が思わず拍手し、笑いながら言った。

「なんて素敵なの。あんたたち、もう“研究家ファミリー”ね」

3人は笑い合った。
目の前の土は何も変わっていないのに、世界の色が少し違って見えた。

──農業という手段の奥にあった“本当の願い”に出会えたとき、
それは静かだけれど、確かな次元上昇だった。

そして、その第一歩が、“言葉でまとめ、発信すること”という形をとって始まっていく。

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