第二回目のひびきの輪の開催も穏やかな天気に恵まれた。農場の一角には、草の香りと、焚き火のほのかな煙の匂いが混じり合っていた。
ひびきの輪での話題は「魂職」

「こんにちは、ご参加ありがとうございます。お茶をどうぞ」
アイが淹れた野草茶の湯気が、参加者たちの手の中でふわりと立ちのぼる。
丸く囲んだ輪の中に、前回も来ていた中学生のつむぎの姿があった。彼女は緊張しながらも、前よりほんの少し表情が柔らかい。
そして、ユウのセッションに何度か通っていた梨乃も、輪の端のほうにそっと座っていた。
「じゃあ、ゆるく始めましょうか」ミカが小さく笑うと、空気が少しほぐれた。
「今日は“魂職”っていうテーマでお話しをしたいと思います」
アイが言葉を選びながら話し始める。
「難しく考えなくてもいいんです。たとえば“自分が自然にやってしまうこと”とか、“ずっと興味があったこと”。そんなところから始めてもいい」
「魂職って…生まれたときから決まってる、みたいなものなんですか?」
つむぎが小さな声で尋ねる。
「魂職は、自分がウイルスの時から人間になるまで十数億年やり続けているものと言われているのだけど、そんなに重たく考えなくていいと思うよ」アイがにこっと微笑む。
「輪廻転生の繰り返しの中で、ずっと同じことをやってきているから、努力しなくてもきっかけと少しの手ほどきだけで、すぐできてしまうものなんだって。」
「…私はまだ、自分に何ができるか全然わからなくて」つむぎが俯きながら言った。
そのとき、梨乃がふと声を出した。
「わかる。私もずっと、自分は何をしたいんだろうって考えてきたけど…結局、行動するのが怖くて。何か言われたらどうしようって思っちゃって」
「梨乃さん、前より声が出てますね」ユウがやさしく言った。「”何をしたいんだろう”って自分の本音を自分で聞こうとするだけでもすごいことなんですよ」
「…でも、ほんとは何も変わってないかもしれない」梨乃がぽつりとこぼす。
その言葉に、輪の中の空気が一瞬静かになった。
でも、誰かが正解を出すような空気ではない。ただ、誰もがその気持ちを知っているというように、静かに頷いていた。
「変わるって、“別の人になること”じゃないと思うんだ」ミカが、ふと思いついたように言った。
「今日ここに来てる時点で、何かを感じて動いたってことですよね。それって、十分“自分を生きる”はじまりなんだと思う」
星の動きも大転換期を知らせている

ユウが続けた。
「2025年って、星の動きが大きくて…って話をしたらスピっぽいですけど、実際に“なんとなく不安”って感じてる人、増えてると思うんですよね。繊細な感度を持つ人たちは、根拠がないけど、何かが変わりそうって感覚を感じていると思うんです。」
アイが頷いた。「だからこそ、外の答えを探すんじゃなくて、自分の声を聞くこと、自分と一致していくことが大事なんです。自分自身で宇宙と繋がって現実創造をしていくことが”自立”だと思うんです。もっと簡単にいうと”自分で自分を幸せにする”こと。“魂職”って、その延長線上にあると思うんですよね」
しばらくして、つむぎがそっと顔を上げた。
「…私、絵を描くのが好き。誰にも見せてないけど、描いてると心が楽しくなる」
その言葉に、ミカがぱっと顔を明るくした。
「えー、素敵!そういう“楽しい”って、きっと大事な入り口だよ」
つむぎが少し笑った。その笑顔を見て、梨乃もほっとしたように言った。
「私はまだ、自分が何を好きかもよくわからない。でも…こうして話してると、これから自分の好きなことや楽しいことを見つけてもいいのかもって思える」
「もちろんです」アイがうなずいた。「“自分の好き”を見つけたいってこと自体が、もうそのプロセスの中にいるってことですよね」
輪の中には、言葉にしきれないけれど、確かに「何か」が動き出す気配があった。
それぞれが、自分の奥にしまい込んでいた気持ちを少しだけ取り出し始めていた。
そして、それができる場所があるということ。
安心して、自分の声を出せる空間があるということ。
それが、この「ひびきの輪」の意味なのだと、三人は改めて感じていた。

