「…これ、描いてみたんです」 ひびきの輪の帰り道。つむぎは、小さなスケッチブックをそっとミカに差し出した。
ミカがページを開くと、そこには、柔らかい色鉛筆で描かれた絵があった。 優しい空のグラデーション。まあるい丘の上に、ぽつんと立つ大きな木。その木の下には輪になって座っている人たちの姿。よく見ると、それは「ひびきの輪」の風景だった。
「わあ…」ミカは目を細めた。
「これ、つむぎちゃんが描いたの?すっごくあったかい」 「なんか、ここにいると、ただ“いられる”って感じがして…それを描きたくて」 つむぎは恥ずかしそうにうつむいたけれど、どこか晴れやかな表情だった。
「これ、ZINEに載せたいな!」ミカがすぐに提案した。「“言葉じゃない表現”って、すごく響くと思う。たとえば、今回のZINEの最後のページに、“感じたことの絵”として…どうかな?」
「……いいんですか?」つむぎは戸惑いながらも、瞳の奥がきらりと光った。
「もちろん!ZINEって、こういう“ひとりひとりの響き”をカタチにするものだから」ミカはにっこりと微笑んだ。
ミカの提案に、つむぎは小さくうなずいた。
「でも……わたし、ちゃんとした美術の勉強とかしてないし、学校にも行ってないし…描くのは好きで…」
「それでじゅうぶんだよ」ミカは優しく言った。「“好き”って、いちばんの才能だと思う。“こうでなきゃ”って思いがちなものも、ここでは“そのままでいい”って伝えたいの。だからZINEに載せようって思ったのは、自然なことなんだよ」
その言葉に、つむぎの中の何かがふっとほどけた。
***
後日、ZINE編集ミーティング。
ミカがスケッチブックをそっと開いて、アイとユウの前に見せた。
「これ、つむぎちゃんが“ひびきの輪”のあとに描いた絵。言葉じゃなくて、“ただ在る”っていう感覚がすごく伝わってきて…最後のページに載せたいなって思って」
アイは目を細めながら、絵に見入った。
「…すごいね。見た瞬間に、空気がふわっと変わった感じがした。“ことばの前にあるもの”って、こういうことなんだろうな」
ユウも、静かにうなずいた。
「“感じる”って、意識より前にある波。絵には、その波動がそのまま乗るのかもしれないね」
3人の間に、あたたかい静けさが流れた。
「じゃあ、ZINEの最後のページ。“響きの余白”って名前にして、この絵と、つむぎちゃんの小さなひとことを添えようよ」ミカが提案した。
「いいね。“余白”って、まさに“在ることをゆるす”っていう感じがする」
アイが、絵に寄り添うような書体でタイトルを書き込み始めた。
――響きの余白
ただここにいるだけで、感じられたこと
描いたのは、つむぎさん
数日後、刷り上がったZINEを手にしたつむぎは、自分の描いた絵が最後のページに丁寧に載っているのを見て、胸がいっぱいになった。
(ああ、わたし…わたしのままでいていいんだ)
言葉にしなくても届くものがある。
そのことを、ひびきの輪が教えてくれていた。
響環ZINE Vol.4
「祖の時代の終焉に皇の感性で生きる」響環ZINE vol.4 ①祖の時代の構造と終焉のサイン
響環ZINE Vol.4「祖の時代の終焉に皇の感性で生きる」響きの余白
共鳴小説:魂職に出会うまで
銀河のリズム、地上の鼓動 ―魂職に出会うまで⑦祖の時代の終焉と皇の時代の芽吹
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