共鳴小説『三つの種、響きのはじまり ― 銀河のリズムの前奏曲 ―』火の章 こころの灯火をたどって③

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火の章 ―こころの灯火をたどって―

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第三章 ほんとうの声

電話の向こうの相手の言葉の裏にある、“響き”に耳を澄ます。そうすると、不思議と、言葉を選ぶ自分がいた。

「ミカちゃん、最近、実績上がってるんじゃない?」

「お客さまが笑顔になってる様子を思い浮かべながらね、“売る”んじゃなくて、“届ける”って感覚で、言葉に意図を乗せるの」ミカがそう答えると

「なにそれ?」同僚は笑った。

「不思議だけど、本当なの」とミカも笑った。

誰かと笑い合ってる時も、ふとした拍子に心の奥にぽっかりと穴が開いているような気がして、
その感覚を、いつも「まあいっか」と見ないふりをしていた。

あの農場で出会った二人は、まるで違った。

畑の上で土に触れながら、
星空の下で静かに語りながら、
アイもユウも、何かを“感じよう”としてくれていた。
それは、ミカの言葉の裏側にある、言葉にならない思いだったり、
笑顔の奥にある、説明できない空白だったり。

あの日の夕暮れ、収穫した野菜を洗いながら、ユウがふとこんなことを言った。
「ミカちゃんの声、すごくやわらかくて、ふわって包んでくれる感じがするの。
きっと、声自体が“場”をつくれる人なんだよ」
ドキン、と胸が鳴った。
「声が…場をつくる?」
「うん、ただ話すだけじゃなくて、響きとか、ことばに乗せる意図とか。
たとえば“祈り”って、そういうことだと思う。
だからね、ミカちゃんの声には、誰かを安心させる力があると思うよ」
その言葉に、ミカは戸惑いながらもうれしさを隠せなかった。
そんなふうに言われたのは、初めてだったから。

そしてもう一つ、アイが言っていた言葉も思い出していた。
「土と関わるって、自分と関わることなんだよ。
自分の内側がバタバタしてると、土も落ち着かないの。不思議だけど、本当なの」

自然と調和して生きていくって、
本当の自分と仲良くなることなのかもしれない。

「…わたし、本当の自分って、なんなのか、ちゃんと知らなかったかも」ぽつりとつぶやいたミカに、ユウはただ頷いた。

アイは少し微笑んで、「それを探す旅が始まったんだね」と言った。

 

あれからミカは空を見上げることが多くなった。

あのときアイが話してくれた「銀河のリズム」、ユウが教えてくれた「銀河の呼吸」のことが気になっていた。目を閉じて、深く吸って、吐く。たったそれだけで、内側に静かに波紋が広がる。

農場で見上げた星空に比べると、ミカの住む街の夜空には星が少ない。でも、見えていないだけで、無数の星があることを今は実感している。

小さな星の下でミカはそっと声を出してみた。

「ありがとう」
その言葉は、誰に向けたものかはっきりしなかったけれど、
どこか胸の奥が温かくなる感覚があった。
そして、小さく声に出すことの力を、初めて知った気がした。
誰かに聞かせるためじゃなく、自分のために。

自分の言葉に身体の細胞たちがふるふると振るえているような、声にすることで、自分が自分に近づいていくような不思議な感覚。

それはまだ、
言葉にならない言葉たちの、静かな芽吹きだった。

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銀河のリズム、地上の鼓動-わたしたちは響き合うために出会った-をキャッチしてくださったあなたへ

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